マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

組織を腐らせる「キャンサー」と腐りやすい細胞

組織を腐らせる「キャンサー」は,少なからず,ある確率であなたの周りにも存在する。そして「キャンサー」は,事前に見抜くことも難しいが,一旦組織に潜り込んでしまったものを見つけ出すことも難しい。


「事前に見抜くには最低3回は面接が必要」「採用直後も要チェック」「辞めさせるにあたって一時的な業務効率低下を恐れるな」などと書いたが,深く潜行してしまった「キャンサー」はなかなか正体を現さないことも多い。
やっかいなのは,そういうキャンサーの悪影響を受け,もともとキャンサーではない人材がキャンサー化することである。

『誰を採用するか・誰を採用しないか』

http://d.hatena.ne.jp/biz-high/20061212/1167210162

引用記事:組織を腐らせる「キャンサー」の見抜き方

http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20061128/114498/?P=2

上記引用記事で,柴田励司氏はキャンサーの特徴を3つ挙げている。
1.常に周囲が悪く,自分は悪くないと考える。
2.社内ポリティクス(政治)を駆使する。
3.自分の地位を危うくしそうな新人をつぶしにかかる。


自分の経験では,上の3つの特徴に全て当てはまるから,「キャンサー」が見つかるというわけではない。
どれか突出した特長が顕著に表われた結果,その人物を「キャンサー」として疑い始め,注意して行動を観察すると,その他の特長にも当てはまるということが多かった。
そんなに「キャンサー」が多いのかと驚く方もいらっしゃるかと思うが,「キャンサー」は少なからず,ある確率であなたの周りに存在すると考えた方がいいと思う。
大企業にいる方は,例え身の回りに存在したとしても,直接利害関係が無いか,その影響力が弱いために気付かないだけだと思う。


「キャンサー」は,組織の中で深く潜行し,徐々に周囲に悪影響を与え,もともと「キャンサー」ではなかった人材を徐々に侵食する。
「キャンサー」は巧みに人の心の弱い部分に訴えてくる。
所属する組織に全く不満を持たない社員は少ない。
「チャンスに恵まれない」,「評価されない」,「報酬が少ない」,「仕事にやりがいがない」・・・・
多かれ少なかれ,こういった不満は誰の心の中にも渦巻いている。
「キャンサー」はこういったポイントを巧みに突いて,組織への不満を増幅させる。
初めはただの“愚痴”や“憂さ晴らし”だったものが,徐々にエスカレートし,やがては組織や上司や同僚への誹謗中傷,攻撃という野放しにできない状態へと悪化していく。
「キャンサー」にとっては,悪いのは自分ではなく全て周りの責任であるから,こうやって人を巻き込むことに何の後ろめたさもないし,むしろ仲間に取り込めない人物を簡単に攻撃対象にしてしまう。


「キャンサー」の情報操作は巧みで,人の“言葉じり”だけを切り取ったり,あるいはデフォルメしたり,ニュアンスを変えてみたり・・・。
「キャンサー」を介して情報が流通すると,誰もが疑心暗鬼になり,人に対して不満が増し,信頼関係が崩れていく。
これこそが「キャンサー」が最も好み,いきいきと活動できる状態である。
逆に言えば,「キャンサー」はこういう状況下でしか自分の存在感を示すことができない。
人が自分に不満をぶちまけ,本音をさらけ出していることを信頼関係だと思い込んでいる。


自分というものをきちんと持ち,自分自身を評価できる人は「キャンサー」には影響を受けない。
しかし,多くの人材は,どこか自分に自信が無く,言い訳や逃げ場を探している。
こういう人材は「キャンサー」の影響如何で簡単に腐ってしまう。
気が付くのが遅ければ,治療は難しく,「キャンサー」と一緒に切除するしか組織を守る方法は無い。


大事なことは,「キャンサー」をいち早く見つけ出すこと。
3つの特徴も参考にはなるが,まずは自分の直感を信じた方がよい。
一緒に働く日々の中で,自分の利害関係ではなく,何かひっかかりはないか。


第三者のことを話題に出すとき,あるいは会話の中で第三者のことに触れるとき。
その人物が“言ったこと”を引用してあなたに何かを印象付けようとはしていないか。
あなたが聞いてもいない第三者のことを語りだしてきたら疑ってみるべきだ。


会話の中で,あなたが知っている誰かと誰かを比較し始めたら疑ってみるべきだ。


その人物に関わる大切なことは,直接その人物と話すべきだ。直接確認するべきだ。
あなたに有用な情報を進言してくれる信頼のおける人物が「キャンサー」でないとは言い切れない。
いや,むしろ聞いてもいない人物評価を“親切に”進言してくれる人物は「キャンサー」であることを疑うべきだ。


「キャンサー」の疑いを持ったら,しばらく注意深く観察しよう。
特に策を講じることはせず,じっくり観察すればいい。
そうすれば必ずボロが出てくる。
「キャンサー」からの進言で自分の中で評価を下げた人物,関係が悪化した人物,そういう人物と勇気を持って言葉を交わそう。
言葉を交わすことで相手への印象が変わったとしたら,進言した人物は「キャンサー」だと思って間違いない。


「キャンサー」は直ちに切除するべきだ。「キャンサー」が更生することはない。
「キャンサー」にとって一連の動きは呼吸をするのと同じくらい自然であり,悪意があるわけではないからだ。
だから絶対に更生することはない。一刻も早く組織から追い出すべきだ。


処理はそれで終わらない。
「キャンサー」に影響を受けた人物を見つけ出さねばならない。

社内メールのチェックシステムがあれば,誰と頻繁にやりとりしていたのかを調査するべきだ。
普段誰と行動をともにしていたのか。
ランチや喫煙や,そういうちょっとしたつながりは意外に深いつながりだったりする。


疑いだすとキリがないし,人間不信にもなってくる。
しかし,「キャンサー」はそれほど危険だと思う。

特に組織が小さければ小さいほどダメージは大きい。


ためらってはいけない。確信を持ったら速攻で処理しよう。
影響を受けたガン細胞も切除しよう。
繰り返すが,「キャンサー」にも影響を受けたガン細胞にも治療方法はない。
切除しか方法はない。