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マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

不二家問題・他山の石として

この手の問題が生じたとき,消費者としての正直な感想は,
『またか,いい加減にしてくれ』かもしれない。
しかし,マネジメント=リスク管理という視点で見れば,ここから他山の石として学べることは多い。
まずこの不二家の不祥事について,現在不二家が公表している情報から問題点を経時的に並べてみる。

●2006年11月8日に消費期限を1日だけ過ぎた牛乳を使用して菓子(シュークリーム)を製造
●その他,牛乳,りんご加工品などの消費期限切れのものを複数回使用
●上記生産工場である埼玉工場以外にも複数工場で,使用期限切れの原料を複数回使用
●その他製造物において,一般生菌数が基準値を超えるケースがあった
●その他,“ネズミ問題”などもろもろの不祥事が明らかとなる

いろいろ内部調査して分かった順で発表しているようであるが,それぞれを突き合せないと,全体像はわからない。
ただ,消費者が何を不安に思い,怒っているかというと,『使用期限切れの原材料を使っていた』ということよりも,『事実関係が小出しにつぎつぎ出てくる』ということではないだろうか。
今回は雪印のケースとは異なり,大量の食中毒患者は出ていない。
両社の抱える問題の根は同じかもしれないが,消費者にとってこの違いは大きいと思う。
実際に私の周りでも,不二家の製品はもうごめんだという反応は少ない。
それよりも,初期の発表が遅れた不誠実さや事実がつぎつぎに出てくる様子を見て,不二家もバカだなあという反応の方が多いのではないか。
消費者の方が大人ということだろうか。


社内でこの問題が発覚し,経営陣の知るところとなったとき,目の前が真っ暗になったに違いない。
監督官庁,マスコミへの事実報告から問題収拾に至るまでの長い道のり・・・。
これらを想像して,「なんとか隠し通すことはできないものか。」と甘い誘惑に駆られたことは想像に難くない。


「このまま問題が大きくならなければ,世間に知られずに収束できるのではないか。」
「公表するにしてもタイミングを計った方がよいのではないか。」
「問題の全容を把握してからでも公表は遅くないのではないか。」


これらは全て経営者が陥り易い誘惑である。


過去の事例を見ればわかるように,隠したり,公表を遅らせたりして事が好転した試しは無い。
もちろん,この不二家の不祥事の影で,その何倍もの不祥事が表に出ることなく葬り去られているのかもしれない。
悪運の強い経営者の仲間入りができる可能性も結構高いのかもしれない。

だとしても,不祥事が表沙汰になった場合のリスクを考えれば,悪運に賭けるよりは,できる限り早いタイミングで公表した方が,払う犠牲を最小限にできる。
不二家を見ていれば明らかだ。


こんな不祥事が起こらないように管理を徹底することが何よりも大切であることは言うまでもない。
しかし,どんなに徹底しても,間違いが起こる可能性はゼロではない。

だから,万が一問題が起こってしまったら,経営者たるもの誘惑に負けてはいけない。
問題が小さいうちに発覚したのであれば,逆に幸運なのかもしれない。


誠意ある対応が,どのような場合にせよ,身を守る最善の方法だ。
コスト的にもある意味最も安く済む方法でもあるだろう。


『もし』という仮定は,意味を成さないかもしれないが,
「もし,不二家が最初の段階で問題を公表していれば」どうなっていただろうか。


やはり,もろもろの問題が噴出して,結果的に同じだったかもしれない。
しかし,企業としての誠意ある姿勢は示せたに違いない。
ここまでのまぬけっぷりを晒すことも無かったように思う。
頭の悪そうなマスコミに問題の本質とは関係無いことをつつき回されることもなかっただろう。


世の経営者は不二家の一件を他山の石とするべきだろう。


もし自分が,自分の会社が同様の立場に立ったとき。
甘い誘惑に勝てるだろうか。


隠し通せるかもしれない。
問題はこれ以上大きくならないかもしれない。
これは大した問題ではないかもしれない。
・・・・・


失うことを恐れるのではなく,どこまでの損失で抑えるのかを合理的に判断する冷静さを保つことができるだろうか。