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マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

病院のイメージ力欠如が地域医療を阻害する

高齢者医療が医療財政を圧迫しているため,医療報酬と介護報酬を改定し,医療の現場を地域医療や在宅医療へシフトし,コストのかかる病院医療の負担を少しでも軽減しようとする動きがあります。


■ライフサイクルの一端を担う病院医療
慢性期疾患には必ずしも完治が望めないものもあります。いわゆる“病気とうまく付き合う”ことで健常者と同じようにとは言わないまでも,生活を営むには十分な健康状態を保つことができます。そのためには地域に密着した地域医療,在宅医療が,生活者の普段の医療を担い,疾患が悪化した場合は急性期疾患を得意とする病院が医療を担うという役割分担が考えられます。
これによって,高齢者の社会的入院や社会的通院(こういう言葉は一般的にはありませんが)を減らすことができ,コストのかかる病院での医療費を抑えることができます。
病院は,私たち生活者の人生のある時期において,(急性期の)疾患を抱えた場合に治療を中心にした医療を提供する場所です。人生のライフサイクルの一部を担っているとも言えます。逆に言えば,地域医療や在宅医療と併せて初めてライフサイクル全般をカバーできる医療環境であるとも言えます。
これをスムーズに行うために,“クリニカルパス”といったシステムがあります。


■退院させるまでがミッションという意識
しかし,多くの病院では,このライフサイクルの一端を担っているという意識が希薄であるように思えるのです。つまり治療して退院させるまでにしか意識が働かないということ。地域連携といった動きも中にはありますが,多くの医者,看護師は在宅医療について持っている情報がとても少ないことが多いのです。
もちろん知識としては持っているのでしょうが,実際に生活者が地域医療や在宅医療に関わっている実態についてはイメージがない。
私たちのように,常に病院に協力を求める“サービス事業者”にとっては,とても連携どころではないケースがほんとうに多いのです。常に治療行為を行うことが目的化し,とにかくベッドの回転率を上げ,退院した後のことまでは気にする余裕もなく患者と家族に任せる。
ただ,この状況はやむを得ないのかも知れません。
病院とて経営しなければならず,より多くの医療報酬を得るためには患者のライフサイクルなんて,かまっていられないのが本音なのでしょう。医療行政が意図したように流れなければ経営が破綻するのです。
理解はできますが,患者は慢性期の疾患を抱えながら退院すれば,また生活者に戻っていくのだというあたり前の意識をもう少し持ってもらえれば,地域医療との連携ももう少し見えてくるのにと残念です。


■まだまだ弱い地域医療の声
地域医療・在宅医療に従事する側もまた医療保険,介護保険など医療行政に翻弄されながらがんばっているのが現状です。
ただ,それぞれが中・小の医療機関であることが多く,病院のように政治的,組織的な力を持っているわけではありません。
ネット上に溢れる彼らの声は,ほとんど同じような不平不満なのですが,現実的に改善されるようなことは期待できないでしょう。
「行政サイドは自分たちの問題として捉えていない。」といった論調がよく見られますが,まさにその通りだと思います。ただ政治とは元来そのようなものなので,こういった地域医療側の声が政治的な力となって影響力を持たない限り,何かが改善される方向に動くということは考えられません。
病院と地域・在宅医療機関の間の連携がまだまだ発展途上なのは,同じ医療機関でありながら力の格差があまりにも大きいという現実も無関係ではないでしょう。


■企業がもっと参入すれば変われるか?
介護系には多くの企業が参入して,いろいろ問題もあるけれど,雇用の創出と人材の流入を促しました。医療系は本丸の病院はまだ企業が参入することは解禁されていません。医者や看護師の派遣も未だ完全には認められていません。
私は病院ももっと自由競争してもいいのではないかと考えています。
医療保険にせよ,介護保険にせよ,事業を行う上で生命線とも言えるプライシングの自由が無いというのは,ほんとうに健全な市場の成長を促せるのか,私は疑問です。
そもそも市場として扱うことを良しとはしていないのですから当然でしょうか。
訪問看護ステーションの悩みは常勤ナースの人材不足と医療報酬による経営難です。決まったことをやっていれば,工夫をしなくても報酬が入るのだから,楽な商売とも言えますが,発展性がないのも事実です。セコム(関連会社)などの企業が訪問看護ステーションを展開していますが,儲かっているという話を聞いたことがありません。
儲からなければ企業は参入しません。自由競争のないところではサービスの質も向上しません。
質の悪い病院のナースと大して変わらないような粗悪なナースが自分の家に訪問するなんてゾッとします。
医療連携も,それが競争に勝つために必要ならば,みんなが率先して実行するでしょう。医療関係者の善意だけに依存した制度は,何の進歩ももたらさないと思うのです。