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マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

管理職の成長スピードが組織の成長を左右する


■中途採用が即戦力にならない
中途採用の社員を管理職にするというのは結構大変です。
もちろん,相応の年収を払って,マネジメント経験と能力を持った人材を獲得できるなら,こんな悩みはありません。
しかし,多くのベンチャー,中小企業は,私たちのように人材獲得コストや給与コストに常に気を配らないといけないレベルですし,いかに安く獲得して育ってくれるか(育てるか)が勝負の分かれ目。
中途市場で,年収350万〜550万クラス,年齢20代後半〜30代前半というのは,いい人材を探すのに苦労します。1つの企業に3年もいない人が多く,経験はあってもきちんと教育されていなので,使い物にならないことが多いのです。
即戦力が売りの中途採用なのに,レベルがまちまちで履歴書だけでは中身を測り知れない。紹介会社がいくら“いい人材”ですと言っても,ダメな確率は結構高いというのが実感。
後輩の指導をやった経験もなく,もちろん管理職として部下を持った経験のある年齢でもない。隣の新人にアドバイスをすることも,指示がなければやらないことも。


■失われた10年で人材が2極化
不景気が長引いた,いわゆる“失われた10年”の間に,人材の2極化がかなり進んでしまった感があります。
就職氷河期といわれた期間,大手企業も採用人数をかなり絞りました。たぶん影響を受けたのは2番手あるいは3番手以降の学生でしょう。
昔から言われていることですが,優秀な学生はいつの時代にも企業は欲しています。ですから,1番手である優秀な学生は就職には困らなかったはず。
バブル期だったらいくつも取れた内定が,1つか2つに減ってしまったというレベルではないでしょうか。第一希望はだめだったけど第二希望には滑り込めたとか。
あるいは,最初から経験重視で中小の優良企業を狙った野心旺盛な学生もいるでしょう。
実際に私が知っている学生は,大手通信企業に内定をもらっていながら留年しましたが,翌年同じ企業に内定をもらっていました。


一方で2番手,3番手以降の学生はどうかというと,もともと一流企業,大手企業に行ける実力はない。景気がよかったら滑り込めたというレベルです。
それが軒並み,本来の実力どおり,あるいは実力にしては多少不本意な企業に就職せざるを得なかった。


それでどうなったかというと,きちんとした社員教育,指導を受けることもできず,やりがいもないまま2年,3年と働くことになった。
そうして,つまらなくなって辞めてしまう。
でも,これだけではここまでの2極化にはならなかったはずです。


■中途ジプシーの群れ
会社を辞めようと思っても,他に就職することができなければ安易に退職という選択はできません。
成長できなかろうが,やりがいがなかろうが,給料が安かろうが,職に就けるだけマシだということです。
ところが,日本は不景気といいながらも,実はほんとうには不景気ではなかった。中小企業は倒産もしたし,大手はリストラも随分やったけれども,国が潰れるほど景気が悪いわけではなかった。
驚くことに,あれだけリストラで失業がクローズアップされていたにも関わらず,失業率は6%を超えていないのです。
つまり,半端に辞めても,次の職にありつけたわけです。しかも,ひとりで食べていく分には十分過ぎる収入もあるし,親にパラサイトしていれば遊ぶ金だって確保できる。


かくして,経験を積まないまま,2,3年で会社を辞めてしまった人材は,次の職場を求めて流浪するわけです。
しかし,経験があるわけでもなく,根性があるわけでもなく,もともと能力も高いわけでもない,どこに行っても同じ事を繰り返すだけ。
そうやって,就職−退職を繰り返しながら,企業を渡り歩く中途ジプシーと化していくのです。


■有能な人材はいずこに
一方,もともと能力が高く氷河期もなんのそので一流企業に就職した人材は,それなりの教育と経験を積むことができます。
というよりも同じ環境下でも成長する力がもともとあるわけですから,たとえ前述の中途ジプシーと同じ職場であったとしても,成長するし,結果も出せるのです。
こういう人材はそのまま就職した企業で経験を積みながら階段を上がっていく場合もありますし,やはりやりがいを求めて転職をする場合もあります。
しかし,中途市場に出回るこういう人材はまだまだ少数で,もちろん私たちのような小さなベンチャーや中小企業が遭遇できる可能性は低い。
絶対数が中途ジプシーに比較して少ないのです。


こうやって,能力のある少数の人材と,能力も経験もない大多数の人材の2極化が進んでいくのです。
受験の偏差値ではありませんが,能力×経験を横軸,人数を縦軸にとると,これまでは見かけ上正規分布だったものが,いまは真ん中が抜け落ちた2コブらくだになっているはずです。
本来なら大企業の3番手,4番手で経験を積めた可能性のある人材が,中途ジプシーと化して,中途市場をぐるぐると回遊しているのです。


■生き残るために
それでも企業として成長しなければならない私たちがどうすればいいかというと,やはり人材を育てるしかない。
中途ジプシーでもいいから,可能性のある人材を育てるしかありません。
ただし,企業の生き残りをかけているわけですから,育たないと判断すれば捨てるしかない。
どこか,私たちよりもまだ成長途上にあるような企業が拾ってくれれば幸いでしょう。
もちろん成長スピードについてこれない場合も同じです。
企業のステージごとに人材を入れ替えていくしかありません。あるレベルまで来れば,有能な人材を新卒で採用することも可能になるでしょう。
2番手,3番手の人材で何としてでも成長するしかないのです。


そのためには,組織を能力に基づいた完全ピラミッドにするしかありません。
私たちのレベルの企業では,能力がそのまま結果として出てきます。人材不足なのだから,チャンスは誰にでも等しくある。
それで結果が出なければ,能力がないものと判断して,人材を入れ替える。
人材の自転車操業です。儲かった分はほとんど人材に投資しているとも言える。
紹介会社は儲かってしょうがないですね。


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