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マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

性犯罪被害にあうということ

本のタイトル,作者が本名で書いていること,そして作者本人のポートレートを装丁に使っていることから強烈なメッセージ性を感じるだろう。


しかし装丁に使われているポートレートからは強烈なものは感じない。むしろごく自然で,近所に住んでいるお姉さんという印象を受ける。(そう,彼女は事件に遭うまでは近所のお姉さんだったのだ。)


タイトルのインパクトからは非常に重い内容を連想させるが,この自然な感じの写真の通り,文章が自然にスゥーっと入ってくる。

性犯罪被害にあうということ

性犯罪被害にあうということ


決して内容が重くないというわけではない。私自身は性犯罪被害に遭ったことがないし,性犯罪被害に遭った身近な知り合いもいないからすんなり読めたのだと思う。
それと,彼女の文体がとてもシンプルでインテリジェンスを感じさせることが読んでいる者に重さを与えないのではないか。


事件の詳細から,彼女の精神的,肉体的ダメージと変化,そして友人,家族といった彼女を取り巻く人間関係の変化が体験者の言葉としてとてもリアルに語られている。


決してセンセーショナルになることなく,極めて感情の抑揚を抑えた表現を使って,とても慎重に書かれた文章だ。
彼女がもっとも重視したのは性犯罪被害者の事実を『伝える』ことだと感じた。


この本を読もうとした理由のひとつに性犯罪被害者に対する“興味本位の好奇心”が正直あった。
だから,この本を通して性犯罪被害者を理解しようとする自分自身の行為に偽善も感じていた。


男性の中には私のような好奇心でこの本の表紙を眺める人も多いのでないだろうか。
しかし,それは彼女の狙いからは外れてはいないはずだ。むしろ私のような男性こそ事実を知るべきである。


男性は(とひと括りにするといけないので),少なくとも私には,性犯罪に対して嫌悪感や怒りを感じる一方で,自分の中には性犯罪者と根本的に変わらない女性に向けられた性的衝動が存在するという矛盾がある。


しかし,むしろ矛盾を抱えているからこそ,避けがちな事実を知った方がよいと思う。


彼女は(性犯罪被害者全ての代表という意味ではなく),男性の性的な衝動を糾弾しているわけではない。

自分たちの欲望や冒険心や好奇心を満たすために,私は道具として使われた。

しかし,私が許せないのは,彼ら個人ではなく,彼らが自分の興味や欲望を満たすためだけに他人を巻き添えにしたことである。

「人に言えない恥ずかしいことをした」という気持ちを抱えて生きることの屈辱と,理不尽な罪悪感をいつも持っていた。性犯罪の被害者の悩みは,ここなのだ。


これらは彼女の偽らざる心境だと思う。


我々男性は,自ら抱える性衝動ゆえか,性犯罪の具体的な行為ばかりに意識がいってしまう。例えば女性の膣内にペニスを入れて射精するという一連の行為そのものは同意があってもなくても区別できるものではない。


見ず知らずの男性に暴力で強制的に屈服させられて道具のように扱われる屈辱感,抵抗できないという無力感,殺されるかもしれないという恐怖感,そういった心を壊してしまうほどのインパクトを与えてしまうことが性犯罪における真の犯罪性なのだと感じた。


「傷ものになる」という表現があるが,これは性犯罪を受けた女性が傷付いて「傷んで」しまうというイメージである。
傷は時間の経過とともに治ってしまうという印象を与えてしまう。
でも彼女たちは身体的,精神的,そして交友関係,家族関係全ての面で,たとえ時間が経って表面的に修復しても,一生変わることのない『痛み』を引きずり続ける。


時間にすれば10分か15分で済んでしまうような行為が,人生を一変させるだけではなく,その後の人生にずっと痛みを残す傷を付けるとすれば,殺人以上に重いかもしれない。


彼女が本名を出したり,顔を出したりするのは,性犯罪被害者の真実を誤解なく『伝える』ためだ。


匿名だとマスコミが視聴者受けするように事実を脚色しても反論することができない。


全てを表に出せば,事実と違うことに対しては「違う」と言えるし,イヤならイヤと言うことができる。とてもクレバーだと思う。


私は,大事な機会を与えられ,メディアに取り上げられたことで,予想以上にたくさんの人の気持ちを知った。

伝えるということは,こんなに大切なことなのか・・・・と思い知った。

『伝える』ことに懸命な彼女が伝えようとしている事実を,できる限り誤解のない形で受け取りたいと感じた。

性犯罪被害者支援活動
http://www.apple-eye.com/micatsuki/

今でも記憶に残っている、自制心のない男たち(再掲載)