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マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

看護と介護が気持ちよく共存するために~看護師サイドから見た介護ヘルパーとの協働

 ■定義から考える

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  病院や施設において、看護師とコメディカル、看護師と介護ヘルパーの関係にはなかなか難しいものがあるようだ。私たちのサービスフィールド*1である在宅(居宅)においても看護師と介護ヘルパーの仕事の領分における関係には難しいものがある。

※『アラジンケア』という自費の看護サービスを提供

 この理由を考えるにあたり、まずそれぞれの定義を見てみよう。

 まず看護。『国際看護師協会』による定義では以下のようになっている。

看護とは、あらゆる場であらゆる年代の個人および家族、集団、コミュニティを対象に、対象がどのような健康状態であっても、独自にまたは他と協働して行われるケアの総体である。看護には、健康増進および疾病予防、病気や障害を有する人々あるいは死に臨む人々のケアが含まれる。また、アドボカシーや環境安全の促進、研究、教育、健康政策策定への参画、患者・保健医療システムのマネージメントへの参与も、看護が果たすべき重要な役割である。

日本看護協会 国際部訳)

 つぎに介護。法律の施行規則から。訪問介護の定義である。

入浴、排せつ、食事等の介護、調理、洗濯、掃除等の家事(居宅要介護者等が単身の世帯に属するため又はその同居している家族等の障害、疾病等のため、これらの者が自ら行うことが困難な家事であって、居宅要介護者等の日常生活上必要なものとする。)、生活等に関する相談及び助言その他の居宅要介護者等に必要な日常生活上の世話

介護保険法施行規則第5条)

 定義を見ると、本来看護の領域は限りなく広い。それに対して介護というのは、生活面に特化して提供される機能となっている。“できる・できない”、“やる・やらない”の問題を置いて考えれば、限りなく広い領域を範疇とする看護は介護を内包していることになる。

 『介護』という用語自体は1800年代後半には見られるようであるが、肉親・家族以外の第3者が提供する行為としての『介護』という言葉は、やはり2000年から始まった介護保険によって一般化したと考えるのが妥当であろう。

介護保険サービスによって政策的に切り出された『介護』

 『介護』に関わる明確な定義が、“介護保険法”によって定められたものしかないということは、そもそも今一般の人たちがイメージする『介護』が、人為的に作られた制度上の業務領域でしかないということではないだろうか。

 介護保険サービスを施行するにあたって必要なサービスを制度設計する中で作り出されたのが介護ヘルパーという職種であり、その仕事の領域として定められたのが『介護』と言われる業務範囲ということである。

 看護師として訓練されていれば介護保険で定義されている『介護』は十分可能である。病理学、生理学、解剖学なども体系的に学んでいる看護師の方がアセスメント能力も高いわけだから、全て看護師が行えば理想的とも言える。しかし、人件費の問題や人的資源の不足を考えれば、短期間の訓練でも可能な業務範囲は別資格を作って、看護師よりも安い人件費でカバーできる方がよい、というのが介護保険の制度設計の根本に透けて見える。

 だとすれば、『看護』という自然発生的でありながら社会科学としても発展してきたものと比較したり、領域を線引きしたりすること自体がナンセンスなのかもしれない。

■看護と介護の共存を図る

 看護と介護の違いが何かを明確にしたところで、看護師と介護ヘルパーが気持ちよく働けるようになるわけではなさそうである。それよりは、お互いが違う職種であるという認識を持ちながらも相互依存的に共存する方が建設的である。

 私たちのスタッフはほとんどが看護師であり、働く現場が在宅なので、同じ場所で同じ時間帯に看護師と介護ヘルパーが働くということが多くは無い。ただし、同一の対象者に対して介護サービス事業者(介護ヘルパー)も入っていることが多く、サービス提供にあたってお互い利害関係を持つことはかなりある。しかも、介護ヘルパーは別事業者の所属であるため、管理者が別でもある。

 過去においては、家族に対してうちのスタッフの悪口を吹き込まれたり、うちのスタッフ同士が疑心暗鬼になるような情報を意図的に流されたり、嫌な経験はたくさんしてきた。そこから学んだことは幾つかあるが、看護師と介護ヘルパーは共存していくしかないのだ。制度上、仕組み上、職種が分かれているわけだから上手くやっていくしかない。

 大切な事のひとつ目は、責任区分を明確にすることである。お互いの仕事の範囲を前提に責任の範囲を話し合っておくことである。介護ヘルパーの持つ不満の原因を探っていくと、根っこに不安があることが多い。自分の仕事の領域が侵されることへの不安、専門知識を持たないために責任を押し付けられるのではないかという不安、いろいろある。そういう不安を持たないように、できるだけ情報を開示し、何が不安なのかを探ってやることである。

 ふたつ目は、介護ヘルパーの仕事をサポートしてあげること。足らないスキルがあれば別事業者であっても教えてあげればよい。それによって先に挙げた不安も解消されるし、信頼関係も築くことができる。

 みっつ目は、それでもおかしいと思うスタッフに対しては事業者に相談するようにすることだ。自分たちにとって何が不都合でやりにくいのかを率直に伝えるようにすると、結構な確率で先方の事業所でも問題視しているスタッフ(介護ヘルパー)であることが多い。注意して治る場合もあるけれど、それが無理なら人を替えてもらうしかない。そこは交渉なのだが、これは普段の信頼関係がものを言う。普段しっかりと先方のスタッフに対してフォローをしていれば、こちらの率直なお願いに対してはきちんと対応してくれる。

■制度的に期待すること

 制度的に期待するところとしては、介護ヘルパーを能力、スキルで資格を分けることである。その資格によってできる仕事の範囲を分けることも必要である。プロ意識の醸成にも重要であると思う。 

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*1:アラジンケア』ブランドにて自費の看護サービスを提供