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マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

『看護はサービス業か?』という議論に潜む看護師のホンネ

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 ■看護師がサービス業だと言っているのは病院の経営サイド

看護師が集まる相談サイトなどで、『看護師はサービス業なのか?』という議論を時々見かけます。

これらネット上の議論の発端となる『看護師はサービス業』という定義は、質問者である看護師が日々の業務の中で突然疑問に思ったわけでは無いでしょう。

恐らく、病院の経営サイドから、看護部長や看護師長を通して、「看護もサービス業と見られる時代になった」とか、「看護にもサービス業のマインドが要求される」といった指導が入ったのではないでしょうか。

病院も選ばれる時代になり、患者や家族をお客様と捉えてニーズに応えていこうとする経営改善が必要となり、医療もサービスという視点から考えようという、ちょっと前から始まった流れの影響です。

 そして一方的に指導された一般の看護師が、日々の業務を振り返りながら、「サービス業と言われても、患者のリクエストに全て応えるわけにはいかないし・・・」、「患者はあくまで患者でお客様ではないし・・・」と違和感を感じ、ネットへ投稿したという流れだと思います。

結局、どの投稿サイトでも、『看護師はサービス業』という肯定派の意見と『看護師はサービス業じゃない』という否定派の意見が分かれ、「サービス業の良い点は取り入れればいい」といった落としどころで落ち着いているようです。

■『看護師はサービス業』と言われて感じる違和感の正体

私自身は、看護師の仕事は高い専門性を必要とする『サービス業』だと考えています。私たちは全額自費の看護サービス(「アラジンケア」ブランドのプライベート看護)を提供していますが、純粋な看護行為以外にも家事サポートや雑用的な業務もまとめて看護師が行っているので、サービス業にカテゴライズするのが妥当だと考えるからです。

 うちで働く看護師も、自分たちの仕事は当然サービス業だし、サービスに含まれる最重要の要素が看護だと考えています。お金を払っているお客様からすれば看護がサービスであろうが何であろうが関係がなく、自分たちのニーズを満たしてくれる事業者として私たちのことを捉えているはずです。

先のネット相談に話を戻すと、『看護師はサービス業』と言われてその看護師が感じた違和感の正体、違和感の原因はどこにあるのでしょう。

大きな要因のひとつは、看護職種から見たサービス業のイメージが「お客様は神様」的な、お客様を絶対的な存在とするのがサービス業といったイメージがあるのではないかと思います。

看護師は専門知識をもって患者に助言したり、患者が間違った認識を持っている時には是正しなければならないこともあります。医療は医療者側と患者側の情報の非対称性が大きい分野と言われています。看護職というのはこういった専門職種であるため、看護師が身の回りで見るサービス業とは違うと感じても決して不思議ではありません。

しかし、コンサル業などもサービス業に分類されているわけですから、単に職種で分類するだけなら看護師もサービス業と言っておかしくはないでしょう。

そしてもうひとつ要因として考えられるのは、看護師と患者の関係は、接客業に見られるようなサービサーとお客様の関係ではないという点です。いわゆる水商売のホステスは接客業でありサービス業のひとつではありますが、看護師と患者の関係はホステスとお客の関係とは違います。患者の苦痛を取り除き安楽な状態にするのは看護師の仕事ですが、お酒を飲んで会話を楽しみ、ストレスを発散をするために来ているお客と病気に苦しむ患者は置かれている状況が全く異なります。

「看護師にホステスになれっていうこと?」と捉えてしまったとしたら、確かに違和感はあります。

 ■『看護師はサービス業』なんて言わなくていい

 ということで、ネットで相談する看護師の気持ちも十分理解できますし、肯定派・否定派両方の見方にはそれぞれ理由があり、それぞれ正しいと思います。

そもそも看護師のマインドチェンジのために『看護師はサービス業』なんて表現を使うからおかしくなるのです。

確かに、病院は一般企業に比べると競争が緩やかで、提供される看護の質によらず入院費用は保険から支払われるために、質を向上させるというモチベーションが高まりにくい環境にあります。モチベーションを上げるために刺激的なフレーズを使いたくなる気持ちは理解できますが、本質が伝わらなければ意味がありません。

病院の経営サイドが看護師に伝えたかったことは、「病院もこれからは競争の時代だから、今以上の素晴らしい看護を提供して選ばれる病院になろう!」ということです。『看護師はサービス業』というフレーズに込めた真意を伝えて、具体的な改善ポイントを伝えなければ、何も変わりません。

■看護師は病院にとって最高の営業マン

病院経営にとって、『看護師は最高の営業マン』だと思います。入院中、医師よりも圧倒的に長い時間患者と接するわけですから、看護師の印象がその病院の印象になる可能性は高いでしょう。

もちろん、接遇やマナーといった表面的なスキルも患者に対して効果はありますが、肝心なのは本来の看護の質を上げることであり、看護の質によって病院の評判を上げもし、下げもすると思います。

病院の経営サイドは、看護師が病院において果たしている役割や価値をよくよく考え、彼らのモチベーションを上げるような施策を考えた方が、単に刺激的なスローガンでミッションの意識付けをするよりもずっと効果があるのではないかと思います。