大企業にいた頃は,毎年新人が入ってきて,教育をして・・・ということを当たり前のように考えていたが,ベンチャーに来たとたん,全員が中途採用になった。過去の職歴,経歴がある分,いい人材とそうではない人材の見分けが難しい。結構失敗している。全社で見ると,約3年間で100人以上が入れ替わっている。これが相場よりも多いか少ないかは私は知らない。ほぼ毎週のように人の出入りがあることも多かった。
よくわかったのは,上場もしていないベンチャーに応募してくれる中途人材は,当たり・ハズレが大きいということ。
人材の流動化が本格化し,中途市場が活性化しているというのはウソではないと思うのだが,日本の場合,優秀な人材は大手企業に集中していて,ほとんど流出していないというのが本当のところだと思う。
マネジメント層,専門職,ごく一部のヘッドハントで獲得された人材以外は,玉石混合という印象を持った。中途=“自分で飛び出して職を見つける積極人材”と考えている自分が世間知らずであった。
コアスタッフ以外の人材は,ベンチャーのステージに合わせて,昆虫が脱皮を繰り返しながら大きくなるように,入れ替わっていくしかない。
ここで重要なのが,「いかに優秀な人材を見つけるか。」ではなく,「いかに危ない人材を見抜くか。」ということであった。仕事ができるに越したことはないが,人格的な面で組織に悪影響を与える人物を採用してしまったら,小さな組織にとっては死活問題である。
少しでも“怪しい”と感じたら,できる限り複数人で複数回の面接を行う。そうすれば1回くらいはボロを出す可能性が高い。また,どんなに大丈夫だと思って採用しても,最初の3ヶ月くらいは何があるかわからない覚悟でチェックを怠らない方がよい。これも時間が経過するほど慣れが出て,必ず何らかの兆候が出てくる。
以前,心理カウンセラーから聞いたのだが,組織に悪影響を与える人間というのは,どんなに表面を繕おうと思っても必ずボロが出るらしい。その期間というのがだいたい20日くらいだというのだ。
私の経験上も,20日=約3週間というのは当たっていると思う。そして,もしおかしいと思ったら,ためらわないことが大切だ。自分が思い入れを持って採用したとしても,できるだけ早く辞めてもらった方がよい。組織の傷が深くなる前に患部は切除しなければならない。
一時的に業務効率が落ちたって構わない。ためらって,決断を先延ばしにして,本当に痛い目に何度も遭った。いまは全くためらわない,ように心がけている。どんな理由を付けてでも辞めてもらう。組織にとって危ない人材がよくなる可能性はゼロだと思う。そんな人材に費やす時間は,次のもっとよい人材との出会いのために使った方がどんなに生産的か。
「誰を採用しないか」というのは,我々のような小さな企業が生き残るために必須の知恵だと思う。
引用記事:組織を腐らせる「キャンサー」の見抜き方
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20061128/114498/?P=2
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