在宅医療の現場においても,病院と同じような医療行為が日々行われている。
製造現場での経験があった私が疑問に思ったのは,現場でのマニュアルが無かったこと。
ひとつひとつのケア=医療行為は複雑なものではなく,経験とスキルのある看護師であれば問題なくこなせる。
だから,対象者=患者(=お客様)ごとの簡単なメニューは用意されていたが,作業マニュアルというレベルでは作ったことがなかったようだ。
物損やしりもち程度のトラブルはあったものの,大きな事故も無かったため,必要性も感じなかったのだろう。
在宅医療の現場では,対象者ごとに医療環境=生活環境が違い,細かいことで言えば,備品の置き場所から違うわけである。にもかかわらず,個別のマニュアルがないというのはミスを誘発する原因になりかねないと判断した。
それで,作業工程ごとに箇条書きにした作業(=ケア)マニュアルを顧客別に作ってみた。
これの効果が発揮されたのは,新人ナースのOJTのときである。
普段,口頭での説明をメモ取りすることが多いナースにとって,非常にわかりやすかったようだ。
各項目ごとに注意ポイントを併記しているので,危険予知にもなる。
在宅医療現場でこのようなマニュアルを使用している事業者はどのくらいいるのだろう?
病院では,患者ごとのマニュアルなどはかなり非現実的だろう。
それでも日々申し送りがされ,目まぐるしく忙しい中で医療行為が実施されているのである。
ナースは結構マメにメモを取るが,レベルはまちまちである。
病院での医療事故は,こういう日常のちょっとした隙間から簡単に発生してしまうのではないだろうか。