以前,同じような題材で,組織を腐らせる社員の存在について書きました。
『御社の営業がダメな理由』の著者である藤本篤志さんのメルマガに,“腐ったリンゴ”という表現でダメな社員について書かれていました。
- 作者: 藤本篤志
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05/16
- メディア: 新書
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内容としては共通する点が多く,『腐ったリンゴ』や『キャンサー』など呼び方は違っても,組織にとって悪い影響を与える社員というのは必ず存在するということを改めて痛感しました。
■腐り方には2種類ある?
自分の周りでも数多くの社員が,“腐った”状態になり,自分からあるいは半ば強制的に会社組織から出ていくことになりました。その人たちを見ていて考えるのは,『もしこの組織でなくてもこの人は腐ったのだろうか?』ということです。
何事につけ否定的,後ろ向きな捉え方をし,批判はするけれど提案は全くしないような典型的な“腐った”人材はいます。組織が未熟な内は,確かにそういう社員が多かったように思います。
しかし,だんだんと組織が成長するにつけ,必ずしもそうとは言えない社員が出てきているのではないかと感じます。つまり,マネジメントがしっかりしていないために“腐ってしまう”社員がいるのではないかと。
自分にも経験がありますが,人の情熱やエネルギーというのは,環境によって真っすぐに発揮されないこともあります。やりたいのに思うようにいかなかったりすると,ついつい考え方がねじ曲がったり,表現が前向きじゃなくなったり・・・。
いまマネジメントする立場になってみてよくわかるのですが,そういう状態にある社員は合いの手の入れ方次第でいかようにでも転ぶ可能性があります。
どんなに手を尽くしてもどうにもならない“腐った”社員がいる一方で,なんとかなるのにマネジメントが適切ではないばかりに,見かけ上“腐ってしまう”社員もいるのではないでしょうか。
■見極めが重要
“腐っていく”社員に対して,それが必ず腐る社員ならば,早急に手を打たなければ,悪影響は伝播します。一方,環境のせいで“腐っているよう”に見える社員も早めに手を打たなければ本当に腐ってしまいます。
これを表面だけ見て最初から見極めるのは難しいでしょう。
やはりある程度介入して初めてその本質を見極めることができるのではないでしょうか。
それが“必ず腐る”社員の場合,見極めるまでの労力が大きい分,報われない思いでいっぱいになりますが,組織のためには必要な努力であったと考えるしかないでしょう。自分が関わってきた社員に対しては,どうしても“腐っている”という評価は下したくないものです。特に目をかけて育ててきた社員であればなおさらです。
しかし,ここで『悲しい』とか『苦しい』という表現を使ってはいけないのかもしれません。
■マネジメントの範囲
『悲しい』とか『苦しい』というのは,人が人として裏切りなどのひどい仕打ちにあったときに使う表現であって,彼らは必ずしも人としてダメではないからです。
やはり会社組織というある決められた枠の中で,彼らは機能を果たさなかったり,悪影響を与える存在であったりするのだと考えるべきでしょう。
そしてマネジメントする側も,その枠の中で機能させたり,成長させることがミッションであって,そこを逸脱して彼らを責めることはできないのではないかと思うのです。
マネジメントという力を企業の成長のために使っている私たちは,そのおよぶべき範囲についても考えていなければ,無用の徒労感を覚えたり,また社員に対しても行き過ぎた影響を与えてしまう気がします。