マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

組織図をすぐに変える会社ほど儲からない

■組織があって人が動くのか,人が動きやすいように組織化するのか

組織が機能的に動けるようにと,経営者は頭をひねって組織図を考える。


考えれば考えるほど,もっと機能的な組織があるんじゃないか,売上が上がらないのは組織構成が悪いんじゃないかと思って,また組織をいじる。


こうやって,たびたびいじくればいじくる程,社員の動きに迷いが見られ,ますます売上が伸びなくなる,というのを実感した。


まず,組織図を変えるには,その組織構成にする狙いがあるはずで,そのコンセプトを社員に浸透させるのはそれなりに時間がかかる。


ちょくちょく組織を変えると,これが浸透しない間に,次の組織図に変わることになるわけだ。
社員にとってみると,新しい組織のコンセプトをよく理解できないし,どうせまた変わるからと,その狙いについて積極的に理解することをしなくなる。


本来は会社のステージに合わせて,最も人や情報が動きやすい形に組織を変えるのがよいと思うのだが,不安になって先読みし過ぎたり,急激な変化に対応できずに組織変更が後手後手に回ってしまうことが多い。


■悪循環からどうやって抜け出すか

組織図上の「社員がこう動くだろう」とか「こう機能するはずだ」というのは,さっきの理屈で言えば外れることが多い。


特に前の組織がうまく機能しなかった場合は,今度の頭で考えた組織もうまくいかない可能性が高い。悪循環だ。


この悪循環を断ち切るには,ひとつはうまくいかなかった組織が,なぜ機能しなかったのかよくよく吟味するプロセスを持つことだ。
そうしないと,常に行き当たりばったりになってしまう。


世間一般で流行っていても,知り合いの経営者から「うまくいくよ」と勧められても,自分の会社のステージや社員レベルを考えて,本当に機能するのか議論するべきだ。


もうひとつは,新しい組織構成の狙いを社員によくよく説明して落とすことだろう。


社員にすると,日々の業務内容が変わらなくても,組織が変われば自分のミッションが変わるから,当然動き方が変わってしまう。それをきちんと納得させておかないと,組織が変わってもやってることが全く同じで,組織図を変えた意味が無くなってしまう。


充分やっていると言いながら,傍目で見ると充分ではないケースが多いように感じる。素直な社員が多いほどその傾向は強いのではないだろうか。


自分の経験では,組織変更に若干抵抗を示すくらいの社員組織の方が説明時の議論が深まっていいんじゃないかと思う。半端な説明では納得しないような社員を相手にする場合は,説明する側もしっかりロジックを立てるし,見落としていた部分が明らかになる。


『はい,わかりました。』と素直に従う社員ばかりだと,理解していないのにわかった振りをして,いざ組織が変わると結局動けない。


素直な社員を相手にするほど,しっかりとした説明が必要だろう。


うちの場合は,後者のケース。


事業部長と人事担当が別の機会に説明を行ったが,反応とか温度差が非常に大きい。


異なる立場の人間が,別の視点を持って説明するのは,理解を深めるために非常に有効だと思うのだが,うちのケースでうまくないのは,社員の反応が違ったときに,それをしっかり分析しないことだ。


事業部長は職制ライン上の上司に当たるわけだから,面と向かっては異を唱えにくい。当たり前だろう。ところが人事担当マネージャーが説明をしたときには,『そんなことは聞いていない。』といった反応があったりする。
『聞いていない。』というのは『やりたくない。』と同義に近い。
ここで,もう少し突っ込んで,納得がいかないところはどこかとか,不安はないのかとか,社員との議論を深めるプロセスを持てばよいのだが,単に反応が違うで済ませてしまう。


・社員の理解度を測る(複数回の説明,異なる職制からの説明など)
・納得感が無いときの議論(組織変更はすることが前提で)
・議論の上でのベクトル修正(新しい組織が機能するときのよいイメージの共有)

こういったプロセスがどのような形であれ実現できれば,社員への理解度が随分違ってくると思う。