マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

医者が増えることはない

■医者になるにはお金がかかるだけではない

医学部に入るための勉強をして,さらに他の学部生よりも長い学生期間を経てようやく医者になる。医者になるためには相当お金が掛かるし,志もなければならない。


医者は世襲制が多いが,それは経済的な面もあるが,幼少期から将来の方向性というか自分のミッションを親から吹き込まれながら育つ環境も大きいと思う。


私の出身高校は中高一貫の私立だが,理系学部,特に医学部を目指す学生が多く,自然,医者の子供が多く集まる。


当時の私は医者というと,職業としてカッコいいとかお金が儲かるといった幼稚な見方しかしていなかったが,同学年の親を医者に持ち,本人も医学部を目指す連中と付き合う内に,実態がよくわかった。


そもそも私立の中高一貫に来ている段階で教育格差があるのだが,その前に小学生から塾に通っているわけで,医学部生の6年間を合わせると,ひとりの医者が誕生するために,いったいどれだけの教育費がかかるというのか。


塾にも通わず,予備校にも通わず公立一本で医者になるようなずば抜けたやつはごく一部の連中で,ほとんどは普通の連中よりは勉強はできますというレベルでがんばるわけだから,お金が掛かる。


それをバックアップするには親の経済力が必要なわけで,医者でなくとも相応の職業でないと無理だ。

それに,お金をかけられるからといって頭のよい子がみんな医者を目指すわけではない。
医者の収入がよいといっても,大きな病院でも経営していない限り,儲かっている中小企業の社長の方がよほど金回りがいい。普通の開業医程度なら他の職業の方がリスクも小さいし,責任もない。それでも医者を目指すのは,医者という職業に社会的なミッションを感じるからだ。


なんだかんだ言っても,親の職業を見て医者という職業に憧れるからだと思う。大変だけれど,一生懸命人を助ける姿とか,その結果人から感謝される姿とか,そういう親の背中を見ながら育つからこそ,自分も医者になりたい,ならなければと思うに至るのではなかろうか。自分もベンツに乗りたいからと言って医者を志すのは,中産階級以下の子供だろう。


■医者を増やすことが解決策なのか

本人の能力と環境的要因という厳しい条件を満たし,なおかつ志を持った人間が医者になる(一部は明らかに違いますが)わけなので,当然数が限られる。そうそう数を増やすと言っても増えるわけがないと思うのだが,増やした方がいいのだろうか。


医者の数自体は問題があるわけではなく,地域間格差や診療科による医者の数の格差が問題なのに,数だけ増やしてもしょうがないと思うのだが。


地域間格差に対しては,診療報酬に地域格差を付け,僻地医療などにインセンティブが働くようにするとか,若い内に必ずローテーションするとか,何か対策を打てそうだとは思うのだがどうなのだろう。


小児科,産科を増やすのは事故発生時の独立した審査機関を設けるとかではダメか。


医療行為として正当な手続きを踏んで発生した医療事故に対しては,医者に対する調査,責任の追及と家族への救済措置を別ものとして進めるわけにはいかないのだろうか。


医療事故発生に対して全て刑事責任を追及されるなら,医者は医療行為を行うことができない。

医療崩壊〜立ち去り型サボタージュとは何か〜

医学部の定員を増やしたところで,医学部生の数が増えたり,医者の数が増えるだけで,必要な地域に必要な医者が増えるわけではないと思う。


金回りのいい美容外科医が増えるような結果になるんじゃないかな。