マネジメント実験室

小さな企業の経営・マネジメントを通して日々考えたこと、学んだこと、感じたことを。

組織はリーダーの器を超えて成長することはないという実感

■リーダーの交代によるブレークスルーはなぜ起こるのか

組織の成長が行き詰って停滞感が漂うとき,リーダーの交代によりブレークスルーするという事例を何度となく見てきた。


リーダーの能力の限界によって組織の成長が止まり,より能力の高い新しいリーダーに交代することによって,再び組織が成長力を持つようになるということ。


リーダー交代により,生き物が脱皮でもするように組織が一皮剥けて,再び成長するベクトルを持つようになる。


「リーダーが代わったから当然」のことと受け止めてきたが,繰り返し経験するうちに,「なぜ成長が止まるのか」,「なぜ再び成長できるようになるのか」という単純な疑問が湧いた。


リーダーシップとかマネジメント力とか,人の力を引き出す能力とか,もちろん様々な複合的な要因の結果ではあるけれど,最も影響が大きいのは,「リーダーが成長する組織のイメージを持っているかどうか」ではないかというのが今のところの結論。


■踊り場での停滞から抜け出せない

どのリーダーも最初は目の前の組織をもっと成長させたい,こんな風に大きくしたいというイメージを持っていると思う。


人事制度を変えたり,オペレーションフローを変えたり,人も替えたりして少しでもそのイメージに近づけようとする。


このプロセスで手腕を発揮できないリーダーも多いけれど,がんばるリーダーにはそれを手助けするサポーターも出てくるから,緩やかであっても成長カーブは描くことができる。


そうやって課題を解決しながら組織は成長するのだけれど,いつの頃からか課題は解決するけれど成長の勢いが無くなる,目の前のモグラ叩きで終始している感がある,施策は打てども目に見えた効果が出てこないといった状況に陥る。“成長の踊り場”に差し掛かった状況である。


このリーダーが組織を率い始めたときも“成長の踊り場”だったはずだけれども,今回はなかなか抜け出すことができない。


“踊り場”での停滞からなかなか抜け出せないうちに,組織の雰囲気も悪くなり,人も辞めてしまう。


かつての状況に勢いがあればあるほど,停滞したときのギャップは大きく,リーダーとしても責任を取るとか,ケジメをつけるとか,能力の限界という理由で組織を去っていくこともある。


■成長後のイメージがあるからプロセスが描ける

組織が停滞しているときのリーダーの言動を注視するとよくわかるが,“愚痴”や“繰り言”が多くなっている。現状が自分の理想のイメージと異なっているために,つい口に出てしまうのだと思う。


現状と理想をつなぐプロセスのイメージが欠如しているのだ。


「いまはこうだけれど,理想に近づくためには,次はこんな風になっていたい。」という2,3歩先のイメージが無く,一足飛びに理想のイメージばかりが強くなっている状態。


現状に満足してしまえば成長は期待できないが,理想と現実のギャップを埋めるイメージが無ければ,どんなに理想を持っていても,現状のカラ周り状態
から抜け出ることはできない。


次のステップをイメージしながら組織を成長させてきたのに,そのイメージが途切れた途端,組織は停滞してくる。


■処方箋はあるのか

こうなってしまったリーダーに処方箋はあるのだろうか。


私自身の経験では,この状態から抜け出たリーダーを見たことが無い。

リーダーが交代することで組織が蘇生するプロセスしか経験していない。


積極的に関わることで,カラ回り状態から抜け出てもらおうとしたこともあるが,全てのケースにおいて無駄に終わってしまった。


組織はリーダーの器以上には成長しないと言うが,器は持って生まれた大きさのまま一生変わらないとは思わない。

本人の努力で後天的に器は大きくなると信じている。


しかし,油断すると,いや油断しなくても,器の成長は止まることがある。

それはどんなに優れたリーダーでも,経験豊かなリーダーでもそうなのだと思う。


それを防ぐ手当てはなんだろうか。


いろいろキーワードを考えたが,最もピッタリ来るのは“希望”ではないかと思う。


将来のビジョンを持っていても,そこへたどり着く希望が無ければプロセスを描けるはずが無い。


逆に少しでも希望が残っていれば,現状に対してどんなに悲観していたとしても,将来に向かって延びる道筋をイメージして,それを信じたくなるものだ。