川崎市の有料老人ホームでの入居者転落事故(事件)が明るみになった後、同じ系列の有料老人ホームにおける入居者虐待の事実が次々と出てきている。
現場の管理レベルや職員の採用基準は似ているだろうから、他の同系列施設からも虐待の事実が出てくるかもしれない。
虐待に至らずとも見方によっては虐待に近い対応は、どこの有老ホームでも多少はあるはずだから、入居者の家族が声を上げるようになれば、似たような事例が他の有老ホームから出てきてもおかしくはない。
このような事件が明るみに出るたびに、高齢者施設の職員、介護職と言われる人たちの質や職業意識、倫理観などが取りざたされる。
報酬を含めた労働環境が良くないから、質の悪い労働者が集まるといった論調もあるが、本当にそうだろうか。
仕事が大変な割には決して高い報酬をもらっているとは言えない職種は他にもたくさんあると思うが、自分のクライアント、顧客、ユーザーに危害を加えるかというと、そんなことはそうそうないはずだ。
例えばスーパーのレジ係が、店に来た買い物客の態度が気に入らないからと言って暴力を振るうといった事件はあまり聞かない。
ラッシュアワーに乗降客をさばいている駅員が、利用者が言うことをきかないからと、ホームから線路に突き落としたりすることもない。
犯罪抑止という視点で見たとき、介護職が置かれる環境との違いは何かというと、職場が密室化されておらず人の目に晒されているということ、それに利用者と1対1になることがない、さらに利用者に何かすれば利用者自身が黙っていない、といったことがある。
人は、極度にストレスのかかる環境で、しかもそのストレスの原因が物言わぬ人だとしたら、誰にも何も訴えることがない人だとしたら、そのストレスをまさにその原因となる人にぶつけてもおかしくはない。
性善説、性悪説、人によって諸説あると思うが、ある一定割合の人はそのような行動に出てもおかしくはない。外からの抑止力の働かない環境では、衝動を抑えられない人はたくさんいる。いてもおかしくはない。人は弱いものだと思う。
高齢者施設自体が、そのように人間の本性というか、内なる衝動を出しやすい環境になっていると考えた方がよいのではないか。
だから、高齢者施設、特に認知症の高齢者が多い施設では、館内全室、全箇所に防犯カメラを設置すればよいと思う。
自分の行動が全て記録されているのに、入居者を虐待する人はいないだろう。
そこまでするかと思う人もいるだろうが、今街中の繁華街で防犯カメラが設置されていない場所を探す方が難しいではないか。
防犯対策として、暗い夜道を無くすために、街灯の数を増やそうとする自治体は多い。
犯罪抑止とはそういうものだと思う。
防犯カメラ設置は、実際には不可抗力であったり事故であったり、認知症高齢者の虚言であったりしたときに職員を守る手段ともなりうる。
どんなにストレス環境下でも自制心を失わず真面目に働いている多くの介護職員のためにも、こういったごく一部の犯罪、事件を起こさない抑止力の導入を急いだ方がよい。