これは非常に薄い本で,その気になれば1日で一気に読んでしまえるほどの分量だ。ただし,中身は非常に濃い。濃いというよりはエッセンスしか書かれていないと言った方がいいかもしれない。
ある若者が優れた“マネジャー=経営管理者”を探して世界中を旅し,『1分間マネジャー』に出会うところから始まる。若者は“1分間マネジャー”と呼ばれる有能なマネジャーから1分間マネージメントの素晴らしさを教わり,やがては彼も1分間マネジャーになるという物語仕立てである。
- 作者: K.ブランチャード,S.ジョンソン,小林薫
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1983/02
- メディア: 単行本
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『1分間マネージメント』の極意は,『1分間目標設定』,『1分間賞賛法』,『1分間叱責法』の3つのノウハウを使うだけで,決して複雑な手法を使うわけではない。1分間というのは単に短時間で簡潔に行うことの象徴的な表現である。目標設定は,部下が簡潔な表現でコミットしたものを紙に書いてマネジャーと共有する。仕事がうまくいった場合は,簡潔ではあるがきちんと賞賛する。ミスを犯したときは,これもまた簡潔に問題の行動のみを叱責する。
『目標が行動を促し,成果が行動を持続させる。』ということを,この3つのノウハウを用いて実践させるのである。
上司の最も大切な仕事は,部下が自ら適切な目標を設定できるようにサポートし,必要なときには労力を惜しまず助言し,ミスに対しては厳格に臨み,少しでもよいところを見つけては褒めることである。特に目標を持たせることがいかに重要であるかについて,簡潔ではあるが説得力のある表現をしている。私のいるベンチャーでは,全て中途採用のため,即戦力を期待する。しかし,過去においては約3年間で100人以上が入社し,そして去っていった。最近ようやく落ち着いてきたが,過去における人の入れ替わりの激しさは,この目標設定を上手にマネジメントできない影響も大きいと考えている。中途なんだからと,いきなり数値目標だけ与えられ,サポートもろくになく,成果が出なければ疎まれてしまう。ますますやる気が失せてしまって,いつの間にかいなくなる。これの繰り返しが100人以上である。最近落ち着いたのは,マネジャーとして機能する人間が,少ないがきちんといて,部下の業務をきちんと見ている結果であると考える。スキルを持った人間がマネージメントをするかしないかでこうも違うものかと思うほどである。とにかく,この本に書いている方法をそのまま実践しなくても,このエッセンスは取り入れるべきだと思う。